「Netflix見てるのと一緒やないですか」 本を"遊び"に戻す、須磨で根を張る Sobi coffee and books

「Netflix見てるのと一緒やないですか」 本を"遊び"に戻す、須磨で根を張る Sobi coffee and books

「Netflix見てるのと一緒やないですか」 本を"遊び"に戻す、須磨で根を張る Sobi coffee and books

JR鷹取駅から徒歩4分のSobi coffee and books。読書を高尚な行為ではなく、あくまで日常の「遊び」に戻したいと語る店主・杉井さんは、本を読まない人もふらりと寄れる場所を作りました。冷めても味の変わらないコーヒー、宝探しのような棚、そして答えのない問いを語る夜。須磨の住宅街にポツンと佇む、8年後の出版社を夢見る本屋の物語。

目次はありません

JR鷹取駅から徒歩4分。須磨の住宅街の一角、公園のすぐ近くに、正午から夜9時まで開いている小さな本屋がある。店名は「Sobi coffee and books」。

コーヒーが飲める街の本屋さん──そう掲げるこの店がオープンしたのは、2024年10月のこと。

店主の杉井さんが目指しているのは、「本を読まない人も来れる本屋」です。

店名の「sobi」は、遊びの、sobi。本を読むことを、もっと気軽な”娯楽”に戻したい。そんな想いから始まった、この場所の物語。

sobi coffee and booksの店内の様子
本棚と外から差し込む光
sobi coffee and booksの店内の様子
外に置かれた椅子

本だけじゃない、本屋を

杉井さんは「本は昔から好きで、ずっとぼんやりと、いつか本屋ができたらいいなと思っていました」と語ります。

個人で本屋を始めるのは難しい時代です。大手出版社と取引するには保証金が何百万も必要で、ハードルは高い。けれど情報を追ううちに、「全部仕入れへんくてもできそうな雰囲気」が見えてきました。本屋開業の可能性は、確かにある。ただ、ずっとコーヒー業界にいた杉井さんには、本屋の知識がありません。

だからこそ、杉井さんは考えました。本を読まない人も来れる本屋にしよう、と。そのとき武器になったのが、10年以上のキャリアを持つコーヒーでした。

「本だけで例えば僕が生きていけるだけのお金が稼げるっていう100%の保証があったとしても、本を読む人しか来ないじゃないですか、基本的に。僕がバイク屋さんに従事してたら、バイク屋と本屋さんになってたし。たまたま世間的に相性の良い組み合わせになっちゃったっていうか、良かったんですけど」

「読書してるんですか!? 賢いですね」への違和感

杉井さんには、ずっと感じていた違和感がありました。

趣味は?と聞かれて「読書です」と答えると、決まって返ってくる反応。

「『読書してるんですか!?』って食いつかれるんですよね。『賢いですね』って言われるんですよ。これ結構もう100%ぐらい」

そんな反応に、杉井さんは違和感を覚えていました。

「これ娯楽じゃないですか。Netflix見てるのと一緒やないですか」

Netflixを見ていても「賢いですね」とは言われない。なのに読書だけが、いつの間にか「高尚な行為」として扱われるようになっている。

「ってことは、本を読むことがすごい価値が上がっていっちゃってる。ちょっと難しいものになっちゃってる。それを遊びに変えたい、元々の位置に戻したいって思いがあってつけてるんですよ」

「宝探しみたいに本を選んでほしい」

しばらく店内を眺めていると、本の並べ方が独特なことに気づきます。

絵本の隣に短編集。哲学書の隣に詩集。ジャンルで区切らず、杉井さんの考える「文脈」でつながっています。

「ぱって見たら適当に置いてるって思われてもおかしくない。でも、ドンキホーテ的な、なんか宝探しみたいな感じで本を選んでほしいっていうのと、普段読まないジャンルに接するには、この陳列が一番いいんじゃないかと思ってて」

選書基準は、まず装丁(ジャケット)とタイトル。 「『ロシアの中のソ連』ってなんやろ、と手に取ったその隣に小説がある。そんな出会いがあったらいいなと」

大きな本屋では誰もいないこともある哲学書コーナー。でも、ここでは詩集が売れ、大人が自分用に絵本を買っていくこともある。

「普段読まないけど良さそうやったんで買っていきます」という言葉が、杉井さんが一番嬉しい瞬間です。

冷めても美味しい、計算されたコーヒー

ドリップコーヒーの豆は、杉井さんがセレクトした3種類ほどのラインナップから選べます。

ここで特筆すべきは、その淹れ方です。一般的によく見られるハンドドリップではなく、お湯を溜めてから一気に落とす方式を採用しています。

「ドリップコーヒーに関しては、本読む前提で味の調整をしてるので、冷めてもできるだけ味の変化が少ないようにしています。本を読んでいると、あったかいうちに飲み切ることはあまりない。友達と話していても、そう」

時間が経っても味が崩れないよう、あえて「派手すぎる豆」は選ばない。本を愛する杉井さんだからこその、細やかな気遣いと、10年以上コーヒー業界に身を置いてきた経験が、このお店の居心地の良さを作っています。

月3回の「本と問い」—AIには出せない「無駄」の蓄積

月に3回、夜に開催しているイベントがあります。その名も「本と問い」。

「幸せに必要な3つの条件って?」などといった、その日ごとに決まっている「答えのない問い」を、最大7名ほどで語り合います。

「タイパやコスパが言われすぎている時代に、あえて無駄なことを考えたいんです。僕らは専門家でも哲学者でもないから、出した答えが正しいかどうかなんて関係ない。ただ、考えること自体が好きやし、二人でスタバに行って『ちょっと幸せについて考えようか』とは、なかなかならないじゃないですか」

最近では、意外な理由で参加する人も増えているといいます。

「AIと喋っててもおもんない、という人も来ます。ChatGPTなら3秒で答えが出る。ラリーはできるけど、なんか違う。その違和感を抱えた人が、『実は1人で考えていた』『実はこんなことを喋りたかった』と集まってくるんです」

杉井さんは、この活動を「vol.300」まで続けると決めています。

「あと8年くらいかかるんですけど(笑)。目に見えないものの蓄積と、目に見えるものの蓄積が、vol.300までいったらなんか生まれると思ってて。その蓄積で、10年後ぐらいに出版社をしたいんです。1冊目はこれにしたろかなと思って。『本と問い』っていうタイトルで。今はまだ、夢物語なんですけどね」

本を読まない人も、読む人も

「静かにしなあかんと思われがちなんですけど、うちはそうじゃなくて」

本屋さんは静かな場所、という固定観念。でも杉井さんは、それを壊したいと思っています。

「本屋さんの『静』とコーヒー屋さんの『動』が混在してほしい。何屋さんか知らない謎の存在、でも、なんか落ち着く場所。そんな場所に、じわじわとなっていきたいですね」

仕事帰りに、あるいは散歩のついでに。Netflixを見るのと同じくらい、気楽な気持ちで扉を開けてみてください。

あなたも、須磨の住宅街にポツンと佇むSobi coffee and booksでちょっと「遊んで」いきませんか?


Sobi coffee and books(ソビ コーヒー アンド ブックス)

  • 📍 兵庫県神戸市須磨区大田町7-3-2
  • 🚃 JR鷹取駅より徒歩4分
  • ⏰ 営業時間:水木金土 12:00-21:00(第一日曜日 13:00-17:00)
  • 🗓 定休日:日月火
  • 📱 Instagram: @sobi.suma
  • 🚲 駐輪スペース2台あり

※「本と問い」は月3回開催。詳細はInstagramでご確認ください。


※ 本記事にはアフィリエイト広告が含まれています。

Naoki Nakayama

Published on

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